― スターフライヤー台湾チャーター便の調査から ―
近年、愛犬や愛猫と一緒に飛行機で移動できる「ペット同伴搭乗サービス」が注目されています。
日本でも、2024年に発生した飛行機事故に伴い、貨物として預けていたペットが犠牲になってしまったことなどを発端に、ペット同伴搭乗サービスが注目されました。ペットを客席に同伴させることの是非や、それによる影響などがSNSを中心に議論されたのも記録に新しいところです。
ペット同伴搭乗サービスは、海外では欧米や韓国を中心に普及が進んでおり、米国の主要航空会社や韓国の大手・LCCも積極的に導入しています。
この記事では、日本国内で定期便にペット同伴搭乗サービスを導入しているスターフライヤーの調査をもとに書かれた論文
「ペット同伴搭乗サービスの現状と経済価値 -スターフライヤー台湾チャーター便の調査から-」を紹介します。
現在の利用実態、将来の利用意向、経済価値などをみてみましょう。
参考:内山真由美・亀山嘉大(2023)「ペット同伴搭乗サービスの現状と経済価値 -スターフライヤー台湾チャーター便の調査から-」アジアへの視点34巻1号p.46-63
調査の概要
- 対象期間:2023年1~2月
- 対象便:台湾旧正月期間に運航されたSFJチャーター便(6往復)
- 回答数:92件(回答率12.3%)
- 調査内容:年齢・性別・訪日回数・訪問地・ペット飼育の有無・ペット同伴経験・利用希望・ワンヘルス意識など
この調査は、中国語(繁体字)のアンケートを北九州空港で配布し、Googleフォームで回収したものです。
ペット飼育状況と実際の利用経験

回答者92人のうち、ペットを飼育している人は27.2%(25人)でした。
その内訳は、小型犬が最も多く19人、中型犬4人、大型犬2人です。
- 実際にペット同伴で飛行機を利用した経験は以下の通りでした。
- 国際線で客室に同伴した経験:0人(0%)
- 国内線で受託手荷物として同伴した経験:3人(小型犬飼育者の約15.8%)
- 客室同伴経験:全員なし
これは、台湾の主要航空会社(中華航空・エバー航空・スターラックス航空・タイガーエア)がペット客室同伴を認めていないことが影響していると考えられます・制度上の制約が大きいことが背景にあるのでしょう。
利用したい人の割合
アンケートでは、直接的な「利用したいか」の質問はありませんでしたが、
仮想市場評価法(CVM)で料金提示を行い、支払い意思を調査しました。
- 初期提示額ごとの「Yes」回答率は以下の通りです。
- 5,000TWD(約2万円):約13%
- 7,500TWD(約3万円弱):約9%
- 10,000TWD(約4万円弱):約14%
料金を下げた場合はYes回答がさらに増加します。条件次第で利用を検討する層は全体の約2~3割と推定されます。
調査結果をまとめると
- 現在利用している人:ほぼゼロ(国内線受託手荷物含めてもごく少数)
- 将来利用したいと考える人:最大3割程度
この結果から、今は利用者が少なくても、潜在的な需要は一定程度存在することが分かります。
経済価値(支払意思額:WTP)

調査の結果、ペット同伴搭乗サービスの支払意思額は以下の通りです。
- 中央値:3,750~5,000TWD(約1.6万~2.14万円)
- 平均値:約1.97万~2.42万円
これは、韓国の大韓航空やアシアナ航空の国際線料金(約1.4万~1.5万円)とほぼ同水準です。
国際線導入の課題
ペット同伴搭乗サービスを国際線で導入するには、以下の課題があります。
- 日台双方での人獣共通感染症(狂犬病・高病原性鳥インフルエンザなど)対策
- 「ワンヘルス」理念の普及と実践(人・動物・環境の健康を一体として守る考え方)
- 手続きや検疫の簡略化、情報提供の強化
まとめ
現在の利用者はごく少ないが、条件が整えば最大3割が利用を検討することが予想される。
支払意思額は韓国の大手航空会社と同等で、サービス価値は十分あると考えられる。
国際線導入には感染症対策や制度整備が必須。
ペットは家族同然の存在です。今後、ペットと一緒に旅行できる選択肢が増えれば、観光産業の新しい付加価値となり、旅行者の満足度向上にもつながるかもしれません。
一方で、飛行機事故があった場合にはペットは法的に荷物とされることが考えらえるので、同伴搭乗していたとしても一緒に脱出できるかはわかりません。同伴搭乗サービスの目的とともに可能なことを明確に議論することが必要でしょう。