猫について

猫の飼育放棄を防ぐための動物愛護法の役割と課題

コロナ禍をきっかけに、自宅時間の増加や癒しを求めて、猫を飼う人が急増したとの報告があります。

猫は犬に比べて散歩の必要がなく、室内飼育がしやすいことから、「気軽に飼えるペット」というイメージを持たれやすいことも、猫が選ばれる理由の一つかもしれません。

しかし、その「気軽さ」が飼育放棄や多頭飼育崩壊といった深刻な問題につながっています。コロナ禍から元の生活に戻る人が増えるにつれて、猫の飼育放棄も増えているようです。

  • 思ったより手がかかる
  • 病気やケガの医療費が高い
  • 引っ越しや生活環境の変化で飼えなくなった

このような理由から、猫を手放す人が後を絶ちません。

捨てないでー!

この記事では、法律の側面から、動物の飼育放棄問題を取り上げた論文をご紹介します。動物愛護法はどのような法律なのか、どのような制度で防ごうとしているのか、そして課題などを説明しています。

金田耕一(2022)「ペット(愛玩動物)の飼育放棄防止に向けられた制度の現状と課題 動物愛護管理法令和元年改正と Dombreval 報告書を題材に」
(東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻者の研究ノートとして公開)

論文の内容

研究の背景

  • コロナ禍でペット需要が急増、安易な飼育開始が飼育放棄を引き起こしている。
  • 繁殖業者の虐待事件も社会問題化し、規制強化や免許制導入が議論されている。
  • 日本では2021年に「8週齢規制」、2022年に「マイクロチップ装着義務化」が施行。
  • フランスでは2024年から犬猫の店頭販売禁止を決定。

ペットの現状

  • ペットは心理的・社会的・身体的利益を与え、「家族」「伴侶」としての認識が広がっている。
  • 日本では犬は減少傾向、猫は増加傾向。犬710万頭、猫894万頭と推計。
  • コロナ禍以降、ペットの新規飼育数が増加。

動物愛護管理法の概要

  • 動物愛護管理法は、民法で「物」とされる動物の取扱いに特別規制を設ける一般法。
  • 飼い主には「終生飼養」の努力義務。
  • 虐待・遺棄・殺傷には刑事罰(2019年改正で強化:懲役5年以下、罰金500万円以下)。
  • 動物取扱業者は登録義務や飼養基準遵守義務。

飼育放棄防止策(飼育開始前)

  • 8週齢規制:衝動買い防止と社会性確保を目的に導入。
  • マイクロチップ義務化:飼い主特定に有効だが、登録不履行に罰則がなく実効性に課題。
  • 店頭販売禁止(フランス):衝動買い防止、ペット福祉向上のため2024年施行。日本では慎重論あり。
  • 不妊・去勢義務化:多頭飼育崩壊防止策だが、費用や監視の課題。
  • 免許制:適正飼育促進策として議論されるが、日本ではリソース不足で実現困難。

飼育放棄防止策(飼育開始後)

  • 罰則は強化されたが、虐待や遺棄の定義が不明確で、予見可能性の確保が課題。
  • 飼育放棄件数は減少傾向だが、多頭飼育崩壊や知識不足による放棄は依然として発生。
  • 行政は人員不足で監視・指導が不十分。

課題と提言

  • 飼育開始前の情報提供と教育の義務化。
  • マイクロチップ登録の実効性確保(罰則付与や確認制度)。
  • 店頭販売規制より、説明・知識確認を強化。
  • 多頭飼育規制の整備と地域猫活動への支援。
  • 動物行政へのリソース強化。
  • 長期的には、動物の福祉を法制度に明文化し、動物の権利に配慮する方向性を検討。

結論

  • 制度改善は進んでいるが、努力義務や監視体制の限界、制度の実効性不足が大きな課題。
  • 飼育放棄防止には、飼育前の教育・監視強化とともに、社会全体での動物福祉意識の向上が必要。

なぜ猫の飼育放棄が起きるのか

猫は一度飼い始めると10年以上生きることが多く、中には20年以上生きる子もいます。

その長い時間を共に過ごすためには、飼い主には経済的・時間的な負担、精神的な覚悟が必要です。

猫の特徴とリスク

以下のような知識がないまま飼い始めると、こんなに大変だとは思わなかったという気持ちから飼育放棄につながります。

繁殖力が高い

避妊・去勢をしないと、あっという間に子猫が増えます。1匹のメス猫から2年で50匹以上に増えることもあります。

1年に2回、5匹くらいずつ産むし、その子猫も1年で産むようになるからね

室内飼育が推奨される

猫が外で暮らすと、交通事故や感染症(猫エイズや白血病)にかかるリスクが非常に高くなるため、完全室内飼育が求められています。

外は敵も病気もいるから怖いの…

医療費がかかる

ワクチンなどの日常的な予防だけでなく、病気の治療や老猫の介護などでは数十万円単位の費用が必要になることもあります。

生きてるんだもの、いろいろ起こるのよ…

日本の法律はどのように猫を守っているか

猫を守るための中心的な法律は、「動物愛護管理法」です。
この法律では、飼い主に次のようなルールや努力義務を定めています。

終生飼養の努力義務

猫を飼い始めたら、その命を終えるまで適切に世話をする義務があります。

「引っ越すから」「子どもがアレルギーになったから」といった理由では、本来は手放してはいけないのです。

虐待や遺棄は犯罪

猫を捨てることには、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則があります。

また、虐待や殺傷はさらに重い罪で、懲役5年以下・罰金500万円以下と定められています。刑法の器物損壊罪より重い罰則です。

最近の制度改正

生後56日(8週)未満の子猫販売禁止(2021年施行)

子猫は生後8週までは母猫と過ごすことで社会性を学びます。そのため、この期間を経ずに販売されると、性格が不安定になり、問題行動や飼育困難につながる可能性があります。それを防ぐために、販売禁止期間が定められているのです。

マイクロチップ義務化(2022年施行)

ブリーダーやペットショップから販売される猫には、マイクロチップ装着が義務化されました。これにより、迷子や災害時に飼い主を特定できるだけでなく、「責任ある飼育」を意識させる役割もあります。

ただし、登録を怠っても罰則はないため、実効性が課題です。

店頭販売禁止(海外の動き)

フランスでは2024年から、犬猫のペットショップ販売が禁止になりました。理由は、「衝動買いによる飼育放棄を防ぐため」と「ペットの社会性を守るため」です。

日本ではまだ議論段階ですが、今後注目されるテーマです。

外飼いと多頭飼育崩壊問題

猫の飼育放棄問題の背景には、次のような猫特有の事情があります。

外飼い文化の名残

昔は「猫は外で自由に」という考えが一般的でした。しかし、今ではリスクが高すぎるとして否定されています。

交通事故や感染症のリスクが高く、フン尿被害などによる近隣トラブルにもつながります。室内飼育は、猫の命を守る最低限の条件です。

多頭飼育崩壊

「かわいそうだから」と保護した猫が増えすぎて、世話できなくなるケースが多発しています。

そのような環境で飼育されている猫たちは、不妊去勢を怠る、経済的負担で医療ができない、劣悪な環境で衰弱するといった問題が多く報告されています。

行政への相談件数も多く、社会問題のひとつです。

われわれも拾われた元野良だけどねえ

でも生活環境は整えてほしいよねえ

飼い主としてできること

最後まで飼う覚悟を持つ

猫の寿命は15年以上。引っ越し・結婚・出産など、ライフスタイルの変化にも対応できるか考えましょう。

不妊・去勢手術を必ず行う

猫の繁殖力は想像以上です。将来の不幸な命を減らすことにつながり、猫の健康や長生きにも効果があるので、避妊・去勢手術は必ず行いましょう。

室内飼育を徹底する

外は危険がいっぱいです。猫が自由に外に出られるようにしていてはいけません。脱走防止にも注意しましょう。

正しい知識を学ぶ

食事・健康管理・トイレ・しつけなど、猫のために知るべきことはたくさんあります。猫の習性を理解することでトラブルを減らせます。

おわりに

猫は私たちに癒しや幸せをくれる、かけがえのない存在です。しかし、飼い主の無責任な行動ひとつで、その命が不幸になります。

「かわいいから」という気持ちだけでなく、命と向き合う覚悟を持って飼育しましょう。また、法律や制度を正しく理解し、飼い主としての責任を果たすことも大切です。

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