猫について

平安時代から現代まで、猫のイメージの変化

猫は「かわいいペット」というイメージだけでなく、神秘的な存在・信仰の対象・縁起物などとしても見られています。日本に猫が住むようになってからの歴史の中で、さまざまな意味やイメージを与えられてきました。

この記事では、遠藤薫著『〈猫〉の社会学』の内容から、平安時代から現代までの猫イメージの変遷を紹介します。

参考:遠藤薫(2023)『〈猫〉の社会学』勁草書房

平安時代(794~1185年)

平安時代の猫は、高貴で神秘的な存在でした。猫はこの時代、単なるペットではなく、「美」と「秘密」の象徴だったのです。

その主な理由は、猫は大変珍しく、貴族階級だけが飼える愛玩動物だったことからきています。唐から輸入された高級品「唐猫」は、当時のステータスシンボルでもありました。

『源氏物語』には、女三の宮が可愛がる白猫が登場します。猫は女性の心情や愛への欲望を象徴する存在として描かれます。

鎌倉・室町時代(1185~1573年)

この時代の猫は、鼠を駆除する現実的な効果が注目される一方で、神秘的なイメージも持たれるようになりました。

猫は経典を齧る鼠を取るため、お寺で重宝されました。仏画や禅画にも描かれるようになり、神秘的で静謐なイメージが強調されます。

その結果、神秘的なイメージが強まったのでしょうか、猫は怪異的な存在としても意識されるようになります。妖しげな力を持つ動物とされることが増えました。

江戸時代(1603~1868年)

江戸時代には、庶民文化のひとつとして猫が普及しました。この時代に流行した浮世絵で美女と猫が一緒に描かれ、ブームのようになったこともうかがえます。

鳥居清信や喜多川歌麿らが美女と猫を組み合わせた作品を多数制作しています。猫は浮世絵の人気モチーフになるとともに、木版印刷技術の発達により広く流通しました。これによって猫は愛らしさの象徴となったのです。

招き猫の誕生

江戸末期に、豪徳寺や浅草寺などで招き猫が縁起物として大流行しました。商売繁盛や幸福招来の象徴として、庶民文化に深く浸透しました。

化け猫伝説の広がり

江戸時代には、化け猫のイメージも広まりました。特に、歌舞伎や浄瑠璃を通して、化け猫の物語が人気を博したことが知られています。「猫又」や「猫娘」など、猫は恐怖と魅惑を兼ね備えた存在として描かれ、江戸庶民の想像力を刺激したのです。

養蚕神としての猫

養蚕業の盛んな農村では、猫は鼠を退治する大切な動物として扱われました。ありがたがる気持ちから神聖な存在とされることもあり、猫絵や猫供養が広まりました。

明治・大正・昭和時代(1868~1989年)

近代化とともに、猫のイメージは多様化します。

従来からの鼠を退治する役割から、紡績工場などで猫が飼われ続けました。蚕や糸を鼠から守る、実用的な理由によるものです。

また、生糸製品を猫絵で包む文化も広まりました。猫で包むことで、糸を守る縁起担ぎの意味もあったのでしょう。海外輸出時にも使われたことから、猫が日本的可愛さを世界に発信するされました。今に続く日本的な猫キャラクターたちの原点かもしれません。

それに加えて、猫はペットとして一般家庭にも普及しました。愛玩動物として身近な存在になったのです。映画などの娯楽コンテンツのキャラクターとしても使われるようになりました。

現代(1990年代~現在)

今でも、猫は癒やしや可愛さの象徴として使われています。2020年代には猫ブームとも言われる状況になっています。招き猫などのモチーフ、キャラクター化、写真集など、猫は現代メディアで最も愛される存在になったのです。

特にSNSでは猫動画や猫画像が爆発的に拡散する傾向が見られます。ネットミームとして猫が扱われることが増えました。現代では、かつての神秘性や畏怖のイメージよりも、可愛いポップな価値が強調されているように思われます。

猫のイメージの変遷

猫のイメージは日本の歴史の中で変化してきました。

  • 平安時代:高貴で神秘的
  • 江戸時代:庶民文化・招き猫・化け猫
  • 近代:ペット化と輸出文化
  • 現代:カワイイ文化とネットミーム

猫はいつの時代も、人々にとって特別な存在であるようです。人間社会を映し出す鏡とも言えるでしょう。猫を通して、文化や信仰、生活や可愛さを表現しているとも考えられます。

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